【イケメン革命】お茶会をご一緒しませんか?〜短編集〜
第3章 チョコレートをおひとつどうぞ
その夜ーーー。
「恋のエッセンスだぁ??」
カイルは思わず大きな声で聞き返す。
目の前にいる、白い軍服で身を包み穏やかな笑みを浮かべる彼ーーーエドガーに向かって。
エドガー「ええ、こちらがそのエッセンスです」
そう言ってエドガーが取り出したのは、女性が好みそうな可愛らしい装飾が施された小瓶だった。
その小瓶を受け取り、自分の机の上に置いてある魔宝石の光にかざしてみる。
(うーん…あいつが好きそうな感じだなぁ)
ふと頭にアリスの顔が過ぎる。
エドガー「意中の彼をメロメロにする、なんて謳い文句で市中に出回っているのですが…その中身、実は媚薬なんですよ」
「ふーん。やけに物騒なもんばら撒いてんじゃねーか」
小瓶の中身は光を受けてキラリと輝く。
エドガー「まあ、媚薬の効果自体は死に至る程の強力なものではなく、持続時間も2時間〜翌朝辺りまでという感じなんですが。
問題なのは媚薬の影響で婦女暴行などの犯罪が増えている、ということです。
しかもバレンタインは明日。兵士達には回収に回ってもらってますがどうしても回収しきれない分が出てきてしまいます」
エドガーはわざとらしく眉をひそめながら困ったように話す。
「で?俺にどうしろって?」
エドガー「カイルにはこのエッセンスの効果を薄めるような薬を用意して頂きたいと思いまして」
そう言って優しい悪魔はにっこりと笑った。
「…ったく。んなことだろーとは思ったけどな、拮抗薬なんつーもんはそう簡単には用意できねーよ。
すぐに用意出来そうなもんは気休め程度にしかならねーと思うが…」
エドガー「ええ、それで充分です。では明日までに必要数を準備しておいてくださいね」
パーフェクトスマイルを浮かべたままエドガーはそう告げると、一枚の書類を手渡しカイルの部屋を出て行った。
「………あんの悪魔め〜〜。今からとか完全に徹夜作業じゃねーか。
あー飲みに行きてーー…」
机に突っ伏してひとしきり毒付いてから、カイルは重い腰を上げて作業に取り掛かった。