【イケメン革命】お茶会をご一緒しませんか?〜短編集〜
第3章 チョコレートをおひとつどうぞ
キュッっと唇を噛み締めた瞬間ぐいっと腕を引かれる。気づいた時にはカイルの腕の中にすっぽりと収まっていた。
「っ、カ、カイル…?」
「…悪かった。お前の気持ちなんも考えられてなかった…」
そっとカイルの胸元に手を置き、私は赤くなった顔を上げてカイルの顔を覗き込むように見つめる。
カイルは顔を見られたくないのか私の首もとに顔を埋めてはいるが、その耳は少し赤くなっていた。
「カイル…私の方こそごめん。わがまま言った。……うん、もう大丈夫!気にしないように頑張る!
………だから…ちゃんといつも通りに対応してあげて」
治療をする上で医者は患者との信頼関係を大事にしないといけない。カイルが今まで築き上げてきた関係を私の勝手な嫉妬なんかで壊すわけにはいかない。
私は強い決意を込めて、グッとカイルを見つめた。
「………わーったよ。ありがとな、アリス。
帰ったら特別に一つ俺がわがまま聞いてやるから考えとけ」
カイルはぽんっと私の頭に手を置くとゆっくり歩き出した。
慌てて私も歩き出す。
「あ!そうだ!義理チョコはいいけど………」
パッとカイルの手にあった、メイドさんからもらったチョコを奪い取る。
「これは没収!」
カイルはびっくりした顔をしていたけど、次の瞬間思いっきり笑い出した。
「ぶっはははは!いーけどよー、チョコ食い過ぎんなよー」
「余計なお世話です!!
ほら、のんびりしてたら終わらないよ!次行くよ、次!」
「おーい。スパルタ過ぎね?もーちょい俺を労ってくれよー」
わざとダラダラし出すカイルを引っ張りながら次の訪問先までの道を頭に描く。馬車に乗るより歩いて行く方が速そうだったので、私はいつもより早足で進んで行った。
(うーん、夕方までに終わるかな…?)
今の時刻は午後を少し過ぎた頃。
私には今日早く帰らなければならない用事があった。
先程の夫人も言っていたが、確かにもうすぐバレンタインだ。というか明日なのだが。
私はまだカイルに渡すチョコレートを用意できていなかった。
(カイルってあんまり甘いもの食べてるイメージないからなぁ…何がいいか悩んでたら時間なくなっちゃった…)
とりあえずチョコレートなどの材料は準備していたので今日の夜色々作ってみて決める予定にしていた。