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【イケメン革命】お茶会をご一緒しませんか?〜短編集〜

第3章 チョコレートをおひとつどうぞ



「カイル先生、今日もありがとうございました」
「まー順調に回復してっから、しっかり水分補給して無理しないようになー。んじゃ、お大事に」

カイルは今日、ハート地区とセントラル地区の往診にまわっていた。
今はハート地区の大きなお屋敷に住む夫人の診察が終わったところだ。
私は朝から大忙しのカイルに付き添い、医療器具の準備や片付けなど雑用を手伝っていた。

「ああ、カイル先生にお渡ししたいものがあったんです。ほら、もうすぐバレンタインでしょう?よろしければこちらを受け取って頂けません?」
そう言って夫人が差し出したのは上品なワインレッドの包みと金色のリボンで飾られた小さな箱だった。

「普段から良くして頂いているお礼ですわ」
「あーもうそんな時期だったか。ありがとなー」
一瞬、断ってくれるかななんて期待したけどカイルは何にも気にしていないようで、かるーく受け取ってしまった。もうこれで3人目だ。

(カイルってば…ちょっとは私のこと気にしてくれてもいいのに…)
ガッカリと肩を落としながらも私はテキパキと片付けを進めた。

お屋敷を出て門までの道を歩いていると、後ろから「カイル先生!」と呼ぶ声が聞こえた。

振り返ってみると、先程お茶を出してくれた同い年くらいのメイドさんが走って来ていた。その顔は走ったためなのか少し赤く染まっている。
「あ、あの……………これメイドのみんなからのチョコです!!カイル先生どうぞ!!!」
ほとんど押し付けるようにしてお花の飾りがついた可愛らしい包みをカイルに渡すと、返事も待たずに再び走り去ってしまった。

「カ・イ・ル・せ・ん・せ・いぃぃぃ〜???」
さすがに我慢の限界にきた私はカイルの頰をつまみながら問いかける。
「いっででででで!!
おまっ、ちょっとエドガーに似てきてねーか?!」
「知らないよっ!
なあに、このモテっぷり!いっつもこんなにもらってるの?本気のチョコじゃないにしたって…わ、私が見てる前で……」
思わず我慢していた気持ちを言葉にすると、じわりと瞳が潤んできてしまった。

ただの社交辞令の、チョコ。
カイルが受け取るのだって、ただの社交辞令。
頭ではわかってるのに心は子どもみたいなヤキモチ焼いてる。
やだなぁ、こんな私。きっと呆れられる…。
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