第12章 連れ攫われた青い花
それから、俺とそいつは毎日会って遊びまわった。平子真子がいつも食べる団子に辛子を入れたり、障子を全部破ったり、顔に落書きをしたり。
その度に俺たちは笑いあって、互いに今日の成果について語り合った。
だが、空と俺は確実に違っていた。空の周りにはいつも人が居た。明るく性格もよい、おまけに人の目を惹かせるあの青い髪は人の心もひきつけた。俺はそれが面白くなく、しばらく空が来ても外へ出ない日が続いた。平子真子たちの話では空がさみしそうにしてたらしいが、もう俺には関係のない話だ。
そしてあるとき、いつものように部屋に籠っていると、庭から何か気配を感じた。それは間違えのなく空だった。
「・・・・何してるんだ」
「・・・・・・バレた?」
悪びれもなさそうに笑う空。
「バレバレなんだよ。・・・・・・それで何の用だ」
「用がないと友達に会いに来ちゃいけないの?」
その言葉は一体何人のやつに言ってきたのか。俺は部屋に戻ろうとした。
「え!?まさかの放置!!ちょっと待って・・・・・・・・わっ!?」
大きな音がして、振り返るとどうやら根に躓いてしまい、そしてどうやらこけたときに足をくじいてしまったようだ。
「・・・・・・はぁ。」
仕方がなく空を抱え、部屋に入れる。
「・・・・ごめん。」
黙々と手当する俺にしょんぼりと謝る桜花。
「・・・・・ねぇ、惣右介。私のこと嫌いになっちゃった?」
「・・・・・・・・・・・・別に」
「もう、遊んでくれないの?」
「・・・・・・・・」
もう遊ぶつもりはないというつもりだったが、空の顔をみたのが失敗だったと思う。
空は泣いていた。目にいっぱいの涙を浮かべて。
「・・・・・・最近身体の調子が良くなかっただけだ。もう大丈夫だから、明日からは・・・・・・ぐふっ」
「そうなの!?よかった!!惣右介、もう遊んでくれないのかと思った!!!!」
飛び付かれてわんわんと泣く空。
この時からか。空への独占力みたいなのが強くなったのは。自分より色んなものを持っているはずのこいつが、俺に振り回されて。笑ったり泣いてたりする姿は滑稽で。そしてどうしようもなく愛おしかった。