第2章 番う狼の話
「俺と話しているのにわからぬ事を言い出したのはお前だ。いくら自分の中では道理でも相手に伝わらねば独り言と変わりない」
「いちいち理屈っぽいな」
「思った事を言っている」
「それが理屈っぽいんだ。わからない奴め」
「この場合わからないのはお前だろう」
「また屁理屈を言う」
「全く聞かない奴だな」
「お互い様だ」
顔を見合わせて笑う。
ああ、幸せだ。これで子供が出来たらば、どれ程満ち足りるか見当もつかない。
その日が待ち遠しくて、私は月狼の首に腕をかける。
私たちの子は、きっと強い子だろう。
月狼の乾いた匂いのする首筋に口をつけて目を閉じる。
大好きな、落ち着く匂い。気の昂ぶる匂いでもある。
胸が膨らんで、深い溜め息が出た。
ああ、楽しみだ。