第15章 竜(ドラゴン)の力
『(ともかく今は皆の治療が優先かな…特に出久君と相澤先生が酷い)』
『モード“風天竜”…“癒しの疾風(かぜ)”』
八雲は風竜の力で周りの空調を操り、天竜の癒しの力をそれに乗せる。そして辺り一体に穏やかな風を起こした。
「凄い、何これ…気持ちいい風やわぁ」
「あっ見て見て!傷が治ってく!」
麗日と芦戸が表情を緩ませ風を堪能する。他の皆も疲れがどっと出たのか、黙って癒しを受けている。
八雲はその間にオールマイトと緑谷の所へ行く。
『オールマイト先生、出久君、大丈夫?」
「っ八雲少女!?」
「えっあっ暁さ、来ちゃ_」
『大丈夫、知ってるから』
「「え!?」」
突如として目の前に現れた八雲に驚く二人。しかしその発言に体を強ばらせる。その隙に二人の体に触れて“天竜”の治癒魔法をかける。
「暁さん、知ってたの…?」
『個性把握テストの時にね。私、耳がいいから…オールマイト先生も声が大きいし』
「うぐっ…」
「緑谷ぁ!!大丈夫か!?」
「切島くん…!」
声のする方へ振り向くと、案の定切島が走ってこちらに向かって来ている。このままではオールマイトの“素”がバレてしまう。
「(切島少年!!なんて素晴らしい心持ち!!しかし待ってバレてしまうやばい待ってくっそおおおおお)」
『(オールマイト焦りすぎ…)』
「っ!!き、切島くん!!待っ…!!!」
「うおおおぉ!?」
いきなり地面から土が盛り出して来た。それは切島と緑谷達を遮る壁となり、三人の姿は完全に隠された。
「生徒の安否を確認したいからゲート前に集まってくれ。怪我人の方はこちらで対処するよ」
それはセメントスの“個性”で作られた物だっだ。セメントスの言い分に納得した切島は瞬時に方向転換し、他の生徒達にその旨を伝えに行く。