第21章 水竜VS冷徹猫
─愛龍side─
…コイツってヤツは…全然気付いてねえ!!
なんだ!?オレの事はアウトオブ眼中ってか!!
なんて奴にオレは恋煩いしてんだ…ったく…。
まあいい。コイツが“そういう事”にバカな程鈍いのは重々承知している。あの毒竜…コブラの野郎、どうやって振り向かせたんだ?
もし暁が気付くまでアプローチしてたんなら逆に尊敬するわ。面倒くさいのが嫌いなオレには出来ない芸当だからだ。
だが…それをオレはしなくちゃならない。この厄介な飼い主兼、相棒兼、姉貴である人を。
虫も早めに片さねーとな。特に爆豪と轟、心操辺りにオレの“なんかヤバいセンサー”が激しく反応している。
心操はクラスが離れているから余り気にしなくていい。爆豪はその都度に躱(かわ)すとして…轟はアレだな、ローグとほぼ一緒のタイプだ。一番ヤバイのはコイツかもしれねえ。
オレがそんな事を考えいるなんて一欠片も思っていない暁は呑気にクラスの応援席で戦いを見ている。
…気付かせるのは今じゃなくていい。先ずは目の前の問題から消化していこう。これは暁からの教えでもある。
─『自分に大変な事があった時、自分の目の前にある壁を壊したい時、上手くいかなかったら…思い出して、自分の原点─“オリジン”を』
『私は自分が負けそうになった時、倒れた時、決まって自分の始まりを思い出すんだ。そうすれば、絶対に前を向いて歩けるから。“燃えてきた”ってね!』
…それ、完璧にナツの受け売りだろ。って思わず突っ込んだオレは悪くない。口に出さなかっただけマシだと思う。
オレには勝てない相手が多すぎると改めて気付いた。しかもアイツらと決着も何も付けずに“この世界”にに来た。
この悔いを心に留めてオレは“この世界”で生きていく。それがオレなりのケジメみたいなもんだ。