第8章 私の“個性”
そっか…百の“個性”である【創造】は、滅多に無い“個性”だ。自分と同じ様な“個性”を見たのは、あれが初めてだったんだろうな。
「しっかし、“水の竜”か…どっかで聞いた事あるんだけどなぁ」
響香が耳のイヤホンを弄(いじ)りながら悩ましそうに呟く。
すると、今まで話しに入りたそうにうずうずしていた金髪に黒のメッシュが入った男子生徒が声を上げる。
「あっ!!あれじゃね!?俺らが小学校上がる前に起きたやつ!」
「あー!確かに、新聞にも写真と記事載ってたぜ!」
「あぁ、俺もよく覚えている。しかし「“水の竜”が敵(ヴィラン)を撃退し少女を救った」と書かれていただけで、肝心の“水の竜”を誰が出したか書かれていなかったな」
金髪黒メッシュ君に続いて、赤髪のツンツン頭の男子と烏頭の男子が会話に入ってくる。
「恐らく、八百万家が圧力をかけたせいですわ。お姉様がメディアの目に触れる事は危険だと思い、お母様に頼んだんです」
『そうだったんだ!ありがとう、百』
あの時はこの世界に来たばかりで、右も左も分からない状態だった。そこにメディアの目が向いたら私はもうパニックになっていただろう。
その時、突然ガタンッという物音が複数した。
そちらを見ると、今まで座っていたのだろう。出久君と爆豪君が立ち上がって驚いた表情でこちらを見ていた。
しかし、驚いた表情といっても顔から察して内容は正反対らしい。
出久君は目を見開いてキラキラした眼差しで私を見ているが、爆豪君は信じられないという顔で私を睨みつけている。
『え、えぇっと…二人共、どうしたの?』
特に出久君なんて話したそうにうずうずしている。
「十年前…敵少女誘拐事件…“水の竜”…暁さんっ!!」
『はっはい!!』
急に顔を近付けられて、思わず声を上げてしまう。出久君はと言うと、嬉しそうに、懐しそうに語り始めた。
「僕、実はあの日かっちゃんと一緒にあの場に居たんだ!悲鳴が聞こえて、思わず二人で駆けつけたら女の子が捕まっていて…どうする事も出来なくて、僕達は見てるしかなかったんだ。そしたら、いきなり“水の竜”が出てきて、あっという間に敵をやっつけてて…凄くかっこよかったよ!!」
そこまで話すと、緑谷君は突然慌て出した。