第8章 私の“個性”
「どういう事かしら」
梅雨ちゃんが続きを促す。
『これはあくまで私の自論なんだけど…私は炎や水、風とか、自然界に存在するものを自分の力に変えることが出来るんだ』
あながち間違ってはいないと思う。滅竜魔導士は自分の属性のものを取り込んで自分の魔力へと変換する事が出来る。私の場合、範囲は広めだけど。
「じゃあ、体力テストの時の瞬間移動は?」
『あれは自分に雷を取り込んだの。だから雷の速さで移動する事が出来たんだ』
「「へぇ〜」」
私の周りに集まっている女子達はもちろん、聞き耳を立てていた男子達も関心の声をあげる。
「自然界って事は風とかは?」
『もちろん操れるし、流れを読んだり出来るよ。だからニュースとか見なくても天気が分かるんだ』
鼻で雨の匂いとか分かるしね。
「炎はどんな感じで出すの?」
『大体は口から吹いて出したり、体の各部分に纏わせる感じかな。これは全部に言える事だけど』
炎は習得するのに苦労したなぁ。ナツみたいにやり過ぎてしまわない様に、頑張ってコントロールしたし。
「水は私を助けて頂いた時に使っていましたね」
『うん。私の中で一番扱いやすいからね』
今でこそ全ての滅竜魔法が使えるが、元々私は水の滅竜魔導士だ。
水竜リヴァイアサン…別世界に来た私を、今でも見守ってくれているのだろうか。
「八百万、暁に助けられたの?」
「はい。もう十年前になりますが…敵(ヴィラン)に捕らわれていた私を救って下さったんです。あの時に見た“水の竜”…今でも忘れられません。」
『えっ!?ごめん!!そんなに心に残る程怖かった?』
水の竜で敵を追い払った時、百は酷く怯えた顔をしていた。てっきり敵に怯えていると思っていたが、私の竜のせいだったの…?
「っ違います、暁お姉様!決してそういう意味ではなくて…」
百は一呼吸置き、私の水の竜について話し始めた。
「あの時、あの“個性”を見た瞬間…私、思わず「美しい」と思ったんです」
『…あの竜を?』
百を助け出すために、咄嗟(とっさ)に出した魔法だったが、そこまで凝って作った覚えも無いし、いつも通りに出したつもりだった。
「今まで見た事が無かったんです。あんなに精密に造形されたものを…しかも水で出来ていたので、とても驚きました」