第21章 水竜VS冷徹猫
─愛龍side─
初めて会った時から、ずっと追いかけていた。
産まれたばかりの時はとても小さい体で、数年経った後でも大きさは変わらなくて、アイツを守れなくて。
唯一使えた魔法である“翼(エーラ)”も、自分の意のままにこなせるようになった頃には、もう1匹の猫が扱えていた。しかもそいつは産まれた時からだった。
アイツを、暁を守りたかった。火竜のような相棒としてではなく、1人の男として。暁を愛する者として。
だから教えを乞うた。暁の近くにいて、それでいてアイツを女として見ていないヤツらに。
最初の頃は反抗ばかりしていたが、今は感謝している。物覚えの悪いオレに、2人は夜遅くまで…時には朝になるまで付き合ってくれた。
あの2人に_グレイとエルザに、お礼の1つも、詫びの1つも言えずに此方に来た。伝えたい事が、伝えきれない事が沢山あったのに。
2人だけではない。いつも何かと世話を焼いてくれる看板娘やオッサン達。素っ気ない態度をしても、冷たく突き放しても着いてくる同郷の猫達。
そして何より…恋敵として宣戦布告しておきたかった滅竜魔導士達。特にアイツらには一泡吹かせておきかった。
アイツらは何かと理由を付けて暁を連れ回す。
火竜は最強メンバーの1人だからと、暁を自然に誘うから、最初はあまり気付かなかった。火竜はいつも「友愛」と「恋愛」の境目が分からない。そういう発言をされる度にヒヤヒヤした。
鉄竜はギルドに加入した時から世話を焼かれ、挙句にちゃっかり甘えている。チャンスがあれば近づこうとしていたし。まあ、オレが毎回邪魔してたけどな。
天竜は…まあ、いいか。女同士だし、同じ滅竜魔導士だし、自身らの共通点が多い人間は仲良くなりやすい。暁も何かと世話になっていたし、見逃してやらんこともない。
雷竜は昔からの付き合いだから元から仲は良かった。一時ギルドを抜けた後、再び再会しても2人の仲に気まずさは無かった。むしろ雷竜は一皮むけて、暁に積極的になっていた。腹立たしい。
…いや、もっと腹立たしいヤツらがいた。