第21章 水竜VS冷徹猫
_おっと、兎を追ってる場合じゃねー。暁のヤツ、なんか仕掛ける気だ。
だがオレの魔法は_それより速い!!
「“氷創騎兵(フリーズランサー)”!!」
オレの手から放った無数の氷の槍が暁へと向かっていく。やった。これで、やっと。
「オレの勝ちだ!!」
氷の槍が暁を貫く…はずが、アイツの体に弾かれた!
『“神の王冠(イルアーマー)”!相変わらずトドメが甘いよ、愛龍』
「!?…“付加術(エンチャント)”か!クソっ…」
噂をすればだ…確かに空中にいるなら〈天竜〉がベストだ。どうする…1度体勢を立て直して…
『_そうはさせないよ!!』
「!!…ぐっ、これは…」
オレはいつの間にか風で出来た結界で閉じ込められていた。魔法を弾かれた隙にか?だとしたら抜け目のねー女だぜ、まったく。
『滅竜奥義…“照破・天空穿(しょうは・てんくうせん)”!!』
竜巻のように荒ぶった風がオレに向かって放たれた。風の結界がある以上、避けきれない。ならば!!
「最後まで抗わせてもらう!!“盾(シールド)”!!」
雪の結晶を象(かたど)った氷の盾を出した。これで受け止めてやる!
「うおおおおぉ!!」
風と盾がぶつかった瞬間、オレは吹っ飛ばされた。そして背中から感じた草の感触に敗北を察した。場外だ。
「八雲愛龍君、場外!!八雲暁さん、二回戦進出!!」
僅かな静寂の後、豪雨のような拍手が起きた。いや、今までギャラリーが静か過ぎたから、そのギャップのせいかもしれない。
「あーくっそ、またかよ…情けねえ」
暁を助ける為にこの世界に無理を言って連れてきてもらった。傍にいる為には対等に力を持つ存在でありたいのに…アイツは常にオレの10歩くらい前を歩いている。
このまま、ふて寝してしまおうか。そう思いヤケクソで瞼を閉じれば引かれる手。
目を開き手を引く人物を見る。勿論犯人は、オレの愛すべき飼い主…いや、相棒か。
『こーら、ふて寝するんじゃない。寝るのなら応援席で存分に寝なさい!』
お見通しだったらしい。…当たり前だ、10年以上の付き合いなのだから。