第4章 夢の中で
《…暁…》
『…う、…』
誰かに、呼ばれている。私は、この声を知っている。幼い声…でも、どこか大人びた様な印象があった。
『…!』
目が覚めると、そこは真っ白な空間だった。周りには何もいない。しかし、目の前には金髪の少女が立っていた。そして頭から生えているあの特徴的な羽は見覚えがある。
《…目が覚めたようですね。お久しぶりです、暁》
『あ、貴女は…マスターメイビス‼』
私の目の前に立っていたのは魔導士ギルド【フェアリーテイル】の初代マスター、メイビス・ヴァーミリオンだった。
彼女はまるで我が子を見る様な慈愛に満ちた眼でこちらを見つめている。
『え、でも…貴女はゼレフと一緒に…』
《…はい。確かに私は彼と共に、この世を去りました》
ゼレフとは、魔法界の歴史上、最も凶悪だったと言われる魔道士の名だ。彼はおよそ400年に渡りその名を魔法界にとどろかせていた。
その正体は不老不死の体を持ち、その体には【アンクセラムの黒魔術】という古い【矛盾の呪い】が掛かっている。
確か彼はとある帝国の皇帝として君臨していた記憶がある。実際に私はその国の魔導士と戦った事がある。
そしてゼレフの帝国とフェアリーテイルが正面衝突した結果、二人共自らの意志で命を散らした。
『もう安らかに眠られたかと思っていました』
《私もそう出来たら良かったのですが…ある事情があり、それは延期になりそうです》
『事情?』
なんの事だろう。私は首を傾(かし)げるしかない。その様子に気付いたメイビスは、私にその“事情”を話してくれた。
《貴女には、この世界を救ってもらいます》