第4章 夢の中で
『……』
驚きで声も出ないとは正(まさ)にこの事だ。
けれど、何か言葉を注(つ)がなければ。
『…“この世界”とは、私がさっきまで居た…?』
《そうです。貴女は今でもそこにいますよ。精神だけをこちらに呼ばせてもらいました》
『そ、そうなんですか…』
メイビスの力は想像をはるかに越える事が出来るようだ。呆気に取られていると、メイビスは詳しく説明してくれた。
“この世界”は約10年後、【悪】と【闇】に染まってしまうらしい。そうなると、“この世界”以外の異世界でも異常現象が起こり、やがて他の異世界も【悪】【闇】に覆われてしまう。
その前に、“この世界”を正す者を送り込んで元に戻せば、世界の秩序が保たれるらしい。
『その“世界を正す者”というのは、やっぱり…』
《はい。もちろん貴女の他に考えられません。ゼレフからも推薦されていましたよ》
『お二人で決めたんですか⁉というか、何故そこにゼレフが…?私、彼とあまり関わった記憶はありませんが』
確かに彼に関連した人物なら沢山関わってきた。と言っても、闇ギルドの不法者やゼレフの名を語って宗教を開いた者などぐらいしかいないが。
《例え自分が関わっていないつもりでも、貴女の行動や言動は周りの人々を惹きつけます。だからこそ、私達は貴女を選んだのです》
『…』
私の行動や言葉が、周りを動かしている…?それだけ私は一目置かれていたのだろうか。自画自賛する気は無いが、素直に嬉しい。
《「付いていきたい」という意見が沢山ありましたよ。ナツやグレイ、ルーシィやエルザ、ウェンディはもちろん、ラクサスやガジル、元“六魔将軍(オラシオンセイス)”であるコブラまで貴女と行きたがっていました》
元闇ギルドの人までいるのか…。確かにフェアリーテイルのメンバーは納得がいくが、コブラは驚きだ。彼とは個人的な用事もあり何回か会っているが、そこまで言ってくれていたとは。
詳しく聞けば、セイバートゥースのスティングとローグまで申し出ていたらしい。
『私…嬉しいです。こんなに沢山の人達からそんな言葉を頂けるなんて』
けど、そこまで言ってくれていた彼らが今、私はと一緒に居ないと言う事は…
『彼らがついて行けない理由があるのですね?』
《…はい。大変心苦しい話なのですが…》
そう前置きをして、メイビスは理由を話し始めた。