第19章 うなれ体育祭!!
私達の正体を話したその日から、私はクラスメイト達と余り会話をしていない。いや、する暇が無かったと言う方が良いのだろうか。
この2週間は、来たる体育祭に向けての準備で忙しかった。家の中でも、百は気を使ってか必要最低限しか話さなくなった。
私は臆病者だと改めて自覚した。これでは皆に話した意味が無い。愛龍も共に準備していたものの、私の様子を見て呆れていた。
でも今更悩み迷っていても仕方がない。なにより今日は_雄英体育祭、本番当日!!!
私達は1-A控え室にいた。周りでは椅子に座り他の者と駄弁ったりなど、思いの外リラックスしている様子が見てとれた。
壁に寄りかかり、目を瞑りながら精神統一していると、出久君と轟君の会話が聞こえてきた。
どうやら轟君が出久君に宣戦布告?をしているみたいだ。出久君はそれに戸惑いながらも自分の真っ直ぐな気持ちを相手にぶつけていた。
ふと目を開き、隣にいる愛龍を見上げる。彼は丁度欠伸をしたらしく、大きく開いた口を手で隠しながら(隠せてないが)涙目で暇そうにしている。
見つめている様子に気付いたのか、彼と目が合う。
「…んだよ」
『私、愛龍に負けないからね』
「なに影響受けてんだ」
あほらし、と彼は私の頭を軽く小突く。
こちらの世界に来て人間の姿になってから、愛龍は私を子供扱いするようになっていた。それが気に入らず顔を背けると、愛龍の鼻で笑う声が聞こえた。
いや、子供扱いじゃなくて、本当に子供になったからなんだと思う。元の世界では、私は立派な大人だったから。
もし、年齢をそのままにしてこちらに来たら、相澤先生と同じように教師をやっていたのだろうか。
そんな事を考えていると、いよいよ入場の時間が迫ってきた。
席を立つ皆と共に控え室を出て、入場ゲートへと向かう。
『(_私は、どこまで行けるかな)』