第18章 水竜の娘の過去と始まり
心操君と初めて会ったのは、私達が小学生の時だった。
家の近くの公園で1人でポツンと立っている彼を見つけ、私から声をかけたのだ。
最初こそは警戒されていたものの、時間が経てば相槌を打ってくれるくらいに打ち解けた。
そこでふと訪ねたのだ。何故いつも1人なのかと。
…彼はそれに答えてくれなかった。どこか泣きそうな、不安そうな眼差しを向けるだけだった。
立ち入った事を聞いてしまったと後悔し、何とか取り繕うとした時、彼の“個性”にかかってしまった。
そのときに私がFAIRYTAILのことについて話してしまったのだ。自分の正体、過去、使命もろもろ全て。
己の口を止めたかったが、なんせ体が言うことを聞かない。ようやく体が動いたと思えば、もう後の祭りだった。
私は彼に謝っても足りない程の事をした。彼を自分の運命に巻き込んでしまったと、泣きながら謝罪した。
だが、それは彼の方も同じだったようだ。
彼自身も私の事を知って同情してくれた。そして今までの事を謝ってくれた。その時に彼はとても心強い約束をしてくれた。
─“俺もヒーローになって、暁と一緒に闇と戦う”と。
それからは以前と打って変わって、彼から話しかけて来るようになったし、ヒーローに関しての話題でお互い盛り上がった。
高校受験の時はもちろんお互い雄英高校を選んだし、ヒーロー科に受かるために鍛錬も欠かさなかった。
そして入学して今。通っているクラスこそは違えど、お互いあの日の約束は忘れず、ヒーローを目指している。
今思えば、彼は私の全てを知っている唯一の人物だった。“個性”のハプニングが原因だったが、そのおかげで今はこうして仲良くやっている。
そんな心優しい彼だからこそ、放っておけなかったのだろう。
私が正気に戻ったら、彼と一緒に屋上にいた。彼は私を見て、あの時と同じ表情をしていた。
『…また、巻き込んじゃったね』
「!…そうだな」
微笑みながら言えば彼は驚いた顔をした後、鼻で笑って呟いた。