第18章 水竜の娘の過去と始まり
人混みを抜けると、いつの間にか静かな廊下に辿り着いた。人っ子一人見えない光景に少し不気味さを感じるが、それがかえってありがたかった。
皆はあの出待ち達に捕まって直ぐには私を追って来れない筈だ。今の内に家に帰ろう。
息を整えて俯いてた顔を上げる。その時。
「_暁!!」
『!…心操、君…』
後ろから名前を呼ばれ振り返る。そこには普通科に通っている友人─心操人使が立っていた。彼も走って追いかけて来たのか、少し息が荒い。
「暁、何があったんだ?A組のHRはやけに遅かったし…」
『っ何でもないよ!ほら、近々体育祭があるでしょ?それで皆、真剣になってて…』
慌てて答えようと言い訳を考えていた頭はモヤがかったようにぼやけてくる。
『!!(これは…“洗脳”!?)』
彼_心操人使の“個性”洗脳は、彼の問いかけに答えた者は洗脳スイッチが入り、言いなりになってしまうというもの。
本人に洗脳する気がなければ発動しないので、私は彼の“個性”の危うさを失念していた。“友達だから大丈夫”だとあまり危険視していなかったせいだ。
『(これじゃ…初めて会った時と一緒だな)』
─この白いモヤが晴れた時にまた説教をしなければならないな。
薄れゆく意識の中、そんな事を考えていた私はやっぱり甘いんだなと感じた。