第18章 水竜の娘の過去と始まり
《とにかく、これからはオレがてめーの親代わりになってやる。文句は言わせねーぞ》
『……』
《返事》
『っは、はい。水竜様の言う事に文句なんて…』
私が慌てて取り繕おうとすると、水竜は面倒くさそうにまた頭を振った。
《その“水竜様”ってのやめろ。名前でいい》
『名前…?』
_うみおう?
そう呟くと彼は焦れったそうに髭を靡かせた後、目を逸らしながら名乗った。
《“リヴァイアサン”だ。大概のヤツらは“リーヴァ”って呼んでる》
そう言うと彼は自分の住処の方へと引っ込んでしまった。
私はただ一人、貝のベッドに取り残された。とにかく頭を整理していると、さっきまで戯れていた小魚達が寄ってくる。
その子達を適当に遊ばせつつ、私はこれからの事を考えた。
私は一族の長である父から捨てられていた。その事を母や城の人達は知っていたのだろうか。今はもう知る術が無い。
コブラはあの後どうなったのだろう。故意的になのかは確信がつかないが、私を捕らえて連れていくという任務を果たさなかったせいで、お咎めを受けていないだろうか。
今は彼の無事を祈る他ない。これからは蓬莱の娘ではなく…
『水竜の娘、か』
案外悪くないかもしれない。リーヴァなら、良い父親になってくれるだろう。
私は貝のベッドへ深く沈み込み、微睡みの中へ意識を飛ばした。