第3章 これからの事
「八雲様…」
『うん?』
「もし、八雲様さえ宜しければ…この屋敷に住んでいただけませんか?」
『…え⁉』
正直に言うと嬉しい話だ。私は記憶を失くした五歳児という設定だし、身寄りがない。
「八雲様に無理を言っているのはわかっています。けれど、私(わたくし)は貴女に側にいてほしいのです」
『今はまだ大丈夫だけど…この先、百(もも)に迷惑をかけることがあるかもしれないよ』
「構いませんわ!」
…どうやら相当この少女に懐かれてしまったらしい。こんな期待に満ちた目を向けられて、断れる筈もない。
『百さえ良いのなら…私はずっとここにいるよ』
「っ‼…八雲様〜‼」
百がぎゅうっと抱き着いてくる。
この約束は、彼女が成長するにつれ不確かなものに変わっていくのだろう。それでもいい。
せめてその時が来るまで、私はこの嘘を付き続けよう。