第16章 戦いの後で
『…根津校長』
「ん?」
あまりにも心臓がうるさかったので、深呼吸をして落ち着かせる。大丈夫、彼は“光側”だ。
『根津校長は…私の正体を知っているんですか?』
「ああ、知っているよ」
事も無げに答えた根津に詰めていた息を吐く。私の様子が可笑しかったのか、根津は楽しそうな表情をしている。
「実は君が雄英高校に来る前から“そういう存在”は知っていたんだ。雄英高校で校長になった時に前の校長に聞いてね」
『そうだったんですか。…他の先生方は?』
「十年前にマスターメイビスから君が来た事を聞いて、雄英教師達に会議を開いて話したけど…ほとんど信じてないんじゃないかな。“魔道士という存在“も、“世界が悪に染まるという未来”も」
『………』
その言葉を聞いて胸が苦しくなった。そもそも“異世界”そのものが存在する事を信じろ、と言う方が無理な話だ。
悪に染まる未来も、ヒーローとしての立場上、絶対あってはならない未来、起こしてはいけない事態なのだから。
『私の今の姿を見て幻滅されるでしょうね…でも、私は_』
「分かっているよ」
『!』
根津は力強く言った。
「オールマイトから聞いたよ。USJでの君の行動…まさにヒーローの動きだったってさ。イレイザーヘッドや13号の怪我も、君のおかげで一日入院するだけで済む程度の傷に治まった。特にイレイザーヘッドは危うく後遺症になる所だった」
『相澤先生は体は勿論、ヒーローとしても致命傷を負っていましたので…“彼”にやってもらったんです』
「彼?」
流石の根津校長でも彼の存在は知っていないようだった。八雲は一つ頷くと、自分の影へと声をかける。