第5章 break time②
御堂筋はマスクの下で少し笑ったが、倒れこんでいる女の子の様子が変わったことに気がついた。
「あ!あれ?メガネ!メガネは、、、えぇっと」
女の子はオロオロと地面に手で漁るような動作でメガネを探している。
はー?メガネ?
メガネ落としたんか、、、ホンマにドン臭いガキやで。
メガネなんかどこにも、、、
ふと足元を見ると銀縁のダサいメガネが転がっていた。
あ、あったわ、、、。
「メガネ、、、メガネ、、、」
依然、同じような所ばかりを探す女の子を見て、御堂筋は溜息をつき、自転車を降りた。
「ふん」
小さな体に合わせて大きな体を屈め、メガネを差し出す。
「、、、、?」
差し出されたメガネの雰囲気を察して女の子は手を出し、御堂筋の手からメガネを受け取る。
ボクは何をしてんのや。
石垣クンがソワソワしながら待ってるんやろ?
こんなんしたってキモがられんのが関の山。
そんなんボクが1番分かってるハズやのに、、、。
女の子が顔を上げる。
御堂筋の心臓が嫌な音を立てた。
「ありがとうございます」
女の子は満面の笑みで礼を言った。
その瞳はキラキラと輝いていた。
ピギ、、、!
イソイソとメガネをかける女の子。
何や、何でコイツ笑ってんの?
それに今一瞬コイツの後ろに見えたのは、、、、嘘やろ?
メガネをかけた女の子は呆然とする御堂筋を見つめた。
あ、そうか。コイツが笑ったんはボクのことが見えてなかったからや。
これでコイツはきっと、、、
女の子は両手でメガネの縁を持ち、よく見ようと目を細めた。
それ、言ってみ?
ここで決まり文句や、何て言うか分かるやろ?
女の子が目を見開く。
ドクン
御堂筋の心臓がまた嫌な音を立てた。
「あ!あなたは昨日、新開君と走ってた人!!」
なんや、、、
あの新開クンの知り合いか、、、
せやで。昨日アイツと走ったキモイ走り方の御堂筋翔くんや、、、
「昨日はすごかったね!!」
御堂筋の耳に思いもよらない言葉が入ってきた。
御堂筋は目を見開いた。
「私、すごく感動した!新開君には勝ってほしかったんだけど、御堂筋君の走りもカッコよくて、、、」
カッコいい?このボクの走りが??