第4章 インターハイ
「まっ、お前サンのええトコを見てくれる女は必ずおる。そーゆー人じゃ思ったら、そん時こそ狼の本領発揮じゃ。多少強引でもええ。後悔せんようにしっかり捕まえとくことじゃ。絶対に自分から手ェ離したりしたらいけんぜ?」
荒北は妙に優しい顔で遠くを見つめる待宮に一瞬だけ呆気にとられたがすぐに我に返った。
「だからウッセーつってんだろが!テメェも今は女いねーんだろーが!テメェこそ頑張れっつーの!」
「エッエッ!そりゃそうじゃ!」
待宮はまた嬉しそうに笑う。
「次に会う時はお互い幸せじゃったらエエのう」
「ウッセ!早く戻れヨ!バァーカ!」
「そうさせてもらうわ。、、、あ!そうじゃ、最後に1つだけ」
「アァン?」
振り返った待宮はえらく真剣な顔をしていた。
その雰囲気に荒北もゴクリと喉を鳴らす。
そして待宮こう言い放った。
「女はやっぱり巨乳に限る!」
「、、、ッ!」
「こう、なんとゆーか、やっぱり幸福感が違うんじゃよー」
無意識に前のめりになっていた荒北は、その馬鹿げた発言に危うく転びそうになった。
その様子を見て待宮はまた笑った。
「エッエッエッ!それじゃあのうー」
「待宮ァ!テメェっ!ふざけやがってーボケナスがァ!!」
待宮はヒラヒラと手を振り、そのまま去っていった。
荒北はバスから見える空を眺めながら、待宮の言った事を思い出していた。
「お前サンのええトコを見てくれる女は必ずおる」
ケッ!そんな奴がいれば苦労はしてねーんだヨ。
俺は、、、
嫌われ者だからな。
荒北は、ふと意識を失う前に現れた沙織の顔を思い出した。
泣いているくせに嬉しそうな沙織の顔。
そして「ありがとう」と言って笑った沙織の顔は、青い空をバックに今思い返してもキラキラと眩しく美しかった。
ま、夢だけど、、、。
っつーか、俺キモ!妄想かヨ!やっぱ、、、疲れてんナ。
周りを見回すと皆疲れて眠っていた。
荒北も少し寝ようとリクライニングを倒して目を閉じかけたその時、そーっと肩を叩かれた。
「あ、あのぅ、、、荒北さん」
「ア?」
見ると1年生部員が2人、怯えた様子で荒北を見ていた。
「あの、お伝えしたいことがあるんですが、、、」
コイツら、確か救護テントまで運んでくれた奴らか。
「何だよ。俺ァ疲れてンだ。手短に話せヨ」
そう言って荒北は面倒くさそうに姿勢を戻した。