第4章 インターハイ
沙織が女子寮中に響き渡る声で叫んでいるのとちょうど同じ頃、荒北は暗い自室で布団にくるまっていた。
最後のインターハイで総合優勝を逃した。
しかし彼がこんな状態になったのは、それが原因ではない。
救護テントでその報をラジオで聞いた時、確かに悔しいと思った。隣で涙を流した泉田の気持ちもよく分かった。
だが自分達は、、、少なくとも自分は全力を出し尽くした。それよりも総北が、最終ゴールを取った小野田が強かっただけなのだ。
広島を追いかけるとき、荒北は真波とともに小野田を運んだ。
「小野田チャンだけ置いてくりゃア、良かったカナ、、、」
救護テントで真波と小野田のゴール争いの実況を聞きながら、荒北はチームの事を考え確かにそう呟いた。しかし実際に小野田と走った荒北は、彼の力を認め、その人柄にも何かを感じた。
だから帰りのバスに乗る前に、負けた真波の悲痛な顔を見た時、荒北は小さく舌打ちをしただけで、何も言わず真波の肩を叩いた。
テメェがンな顔してんなヨ、、、。
あの怪物を運んだのは俺だ。
お前はこんな時こそ笑っとけ、不思議チャンなんだからヨ、、、。
そんな想いを込めた。決して口に出したりはしないけれど、、、。
バスに乗り込み2人用の席を荒北は足を伸ばして広々と使う。そんな荒北を見て東堂はズルイだの何だの絡んできたが結局無視をして1人で座った。
「ウゼーんだよ!」
「ウザくはないな!!」
そんなお決まりの会話をしながら、
こんな時くらい黙って見過ごせヨ
とは思ったものの、それは東堂なりの周りへの気遣いだと知っていたので何も言わなかった。
バスに揺られながら、出発前に広島の待宮とベプシを飲んだ時の事を思い出していた。