第4章 インターハイ
「あー!もぉー!疲れたっ!!」
寮に戻ると沙織はそのままベッドに飛び込んだ。
レースの結果は終わるなり届いた佳奈からのメールを読んで知った。
結果は2位、、、。
「スゥー、、、、ハァー、、、」
枕に顔を埋めて大きく深呼吸をし、今日の出来事を思い出す。
あの後、沙織は巧の待つ車まで戻った。
「あれ?もうレース終わったの?」
ドアを開けるなり言われた巧のその言葉で沙織はレースがまだ終わっていないことに気がついた。
そんなことにも気がつかないほど沙織の頭の中は真っ白だった。
「あ、えっと、ちょっと疲れたから帰ってきた」
「そっか。それじゃ帰ろっか」
そんなボーッとする頭で考えたお粗末な言い訳を巧は笑顔で受け入れた。
そして土や血で汚れた服にも、何を話したかも覚えていない帰り道の沙織の態度にも、そしてレースの経過にさえ巧は何も言及することはなかった。
「ハァ、、、」
沙織はせっかく深呼吸で取り入れた新鮮な空気を、すぐに溜息にして吐き出した。
巧には悪いことをしてしまった。
これは帰ってから気づいたのだが、沙織の顔はヒドイ有様だった。これではいくら笑っていても、大泣きしたことがモロバレである。
おそらく巧は気をつかって、何も聞けなかったのだろう。
沙織はそう思った。
、、、ってか、
「全部アイツのせいだ、、、」
アイツがあんなこと言わなければ、、、
沙織は荒北のことを考えた。
「綺麗だナ、、、お前」
荒北の顔を思い浮かべた途端、あの時の記憶が蘇る。
「ブッファ!!」
沙織は枕に顔を埋め込んだ。こうでもしないと顔が爆発しそうだったからだ。
なんなんだ、アイツは、、、!!
沙織の顔はどんどん熱くなった。
どうして、、、
忘れようと考えないようにとするたびに、荒北の不敵な笑顔が蘇った。
「ーーッ!」
我慢できなくなった沙織はベッドの上に跳ね起き、そして大きく息を吸い、叫んだ。
「クソー!!荒北ーーーっ!死ねーーー!!!」
私の頭の中から
「消え失せやがれ!ボケ北ーーっっ!」
その声は寮の廊下に響き渡り、
「香田さんヤバいって!」
「荒北くん、何したの!?」
その夜、寮に住む女子生徒たちが怯えながら一夜を過ごしたことは言うまでもない。