第4章 インターハイ
「ちょっと!お姉さん!?」
ポンと肩を叩かれて、沙織はまた我に返った。
振り返ると、一緒に応援していた男2人が顔を真っ赤にして肩で息をしていた。
「あ、お前ら、、、」
「あ、お前らじゃないしっ!急に飛び出して行くんだもん!ビックリしたじゃん!」
「ハァ、、ハァ、、っつーか!お姉さん!足、、、ゼェ、、、速すぎ、、、」
「ごめん、つい、、、」
素直に謝る沙織に男達は顔を見合わせた。
「ま、、、まぁ、いいんだけど。これ、落し物だよ」
そう言って、1人が沙織が脱ぎ捨てたサンダルを差し出した。
「ありがとう、、、」
サンダルを履きながら素直に礼を言う沙織に男達は目を丸くした。そして柄にもなく、しおらしい沙織の背中をバシッと叩いた。
「ったく、どうしたの?お姉さんらしくもなくボーッとして!荒北には会えたの?」
荒北、、、
その言葉に沙織の心臓は跳ね上がった。
「綺麗だナ、、、お前」
荒北の掠れた声が蘇る。
心臓がどんどん早くなった。
「お姉さん?」
男達が俯く沙織の顔を心配そうに覗き込む。
沙織はバッと顔を上げて、踵を返した。
「ッ!!も、もう帰るっ!!」
「え、、、ちょっと!」
沙織はスタスタと歩き始めたが、ふと立ち止まった。そして振り返り、男達を見る。
「今日は、、、サンキュな。色々楽しかった、、、」
その目は睨みつけるように鋭かったが、真っ赤に染まった頬と涙の溜まった瞳は妙に色っぽい。
それだけ言うと男達の返答も待たずに沙織はまた歩き出した。
男達はその後ろ姿を茫然と見つめた。
「、、、やっぱいいな」
「あぁ、、、すごくいい、、、」
「荒北って奴、ぶちのめしたいって思うのは俺だけか、、、?」
「いや、俺もそう思ってたところだ、、、」
会ったこともない男達からこんな嫉妬を買っているなんて夢にも思わない荒北は、運ばれた救護テントのベッドで懇々と眠り続けていた。