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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第1章 春はあけぼの


「荒北、先に上がるぞ」
部室でローラーを回す荒北に、自転車競技部キャプテンの福富が声をかけた。
「おう!福チャァン!俺ァ、あと外一周してから帰るわ!お疲れェ!」
外はもう暗くなり、部員はほとんど帰っていた。荒北は図書委員の作業で遅れた分を取り返すべく、残って練習をしていたのだ。
「荒北、今年はお前にもインターハイに出てもらう。きっちり調整しておけ」
そう言って福富は帰っていった。
「フツーはこういう時、無理するなよだろ、鉄仮面が。、、、あー!しゃアねーなァ!一周追加してやんヨ!!クソがァ!」
残された荒北はローラーを回しながら頭を掻いた。


外回りも二周目の終わりに差し掛かった頃、荒北は学校へと向かう坂を登っていた。この坂は最寄り駅へと続く唯一の道だったが、山の近くということもありかなり暗い。荒北はライトを調整して、荒々しい息遣いで登っていった。
「クッソ!もっともっと、、、もっと行けンだろーが!!」

今年、3年にしてやっとインハイメンバーに選ばれた。必ず福チャンを、この箱根学園を総合1位に導かなければいけない。その想いが彼のペダルをもっともっとと急かすのだった。

荒北は猛スピードで最後の坂を駆け上がった。心臓は大きく脈打ち、足はヘトヘトだ。
人前での練習ではイマイチやる気を見せるのはダサく嫌いだが、1人で練習の時はいつも全力だ。
そして落ち着いて空を見上げた時、ふっと思い出した。
そういえばさっき坂の途中で変なものを見なかったか?
黒い影が2つ重なってた。
カップルがイチャついてやがっただけか?
いや、それにしては様子がおかしかったよーな、、、
ふと、下を向くと「痴漢出没。夜道は1人で歩かない」という看板が目に入った。
一瞬考えた後、荒北は愛車に跨り、坂を駆け下りた。

一応だ!確認して、違ったらまた登りゃアいい!!

なんだか嫌な予感がしていた。
野生の勘が早く行けと荒北の心臓を急かした。
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