第4章 インターハイ
だからあの晩、急に「優勝しろ」なんて言われた時、普段であれば厳しく跳ね返すのに、沙織の笑顔とともに放たれたその言葉は、自分でも驚くほどスッと胸に落ちた。
何か大切なものを託された気がした。そしてそれが何故か嫌ではなかった。
ったく、ホントに罰ゲームだろ、神様。
もう疲れてンだけど、、、。
俺がこーゆー奴につくづく甘いって分かってやってンだろ?
荒北は一気にペダルを回して、待宮に追いついた。
そしてこう言い放った。
「俺はお前みたいな奴、嫌いじゃないぜ?」
本心だった。
あーマジで限界。
ホントはこんな口動かしてる余裕もねぇンだけど、、、
自分みてぇな奴見てると、引き上げたくなっちまうンだ。
だから、テメェも早く上がって来いよ。いつまで寝てンだ、デカ女。
一気に広島を追い越し、遠く後ろに見える待宮を振り返った。
「レース終わったら一緒に飲もうぜ。ベプシ、奢ってやるよ俺が」
なぁ、香田。
何でテメェは来てねーんだよ。
ちゃんと見に来いよ、取ってやるから。
そしたら奢ってくれンだろ?
ベプシ、楽しみにしてンだからよ。
、、、
っつーか、アイツのセリフ、パクってんじゃねーヨ、俺。
、、、ダッセ。
荒北は流れ落ちる汗を拭った。そして雲1つ無い空を仰ぐと、福富の元へと急いだ。