第4章 インターハイ
沙織の頭の中に、頬杖をつき窓の外を眺める荒北の後ろ姿が浮かんだ。
風に揺れてキラキラと光るサラサラの髪。
勝手に期待してるだけの
ただの傍観者だ、、、。
その言葉になぜか沙織の心臓は握りしめられたように苦しくなった。
「あっ!彼氏さん、動いたみたいっすよ!」
「え!!ほんと!?っつーか、彼氏じゃないって!!」
そう言って男達を睨みつけながら、実況のアナウンスに耳を澄ます。
「荒北選手、先を行く箱学、総北の選手達に追いつき、合流しま、、、え!合流せずに広島を追いかけます!凄まじい勢いです!」
きっと、また色んなところに傷を作りながら走っているんだろう。
あのギラギラ輝く瞳で前だけを見て。
ってか、仲間も見えてないのかよ笑
「今、広島に追いつきました!後方集団から上がり、ついに広島に追いつきました!このまま抜けるのか!?それとも広島が逃げ切り、先頭集団に追いつくのか!?」
「頑張って、、、」
自然と沙織の口が動いた。しかしその声は誰にも聞こえない程小さかった。
「おっ!追いついたって!マジかぁ!すげー!」
「でもここからが勝負だろ。広島は6人全員揃ってる。それに対して荒北達は3人だ。正直かなり厳しいだろ」
「頑張れ、荒北、、、」
頑張れなんて言葉、何の役にも立たない。
そんなの分かってる。
私なんかに言われても、きっと、、、。
でも、、、
「ってか、おねーさん!彼氏じゃないんだったら、この後2人でご飯でも行きません?俺良い店知ってるんですよー」
男の1人が笑顔で沙織に声をかけた。
「ハァ!?2人でって、俺はどーすんだよ!」
すかさずもう1人が反発する。
「あ?テメェは1人で帰ってろよ。」
「何だそれ!っざけんな!おねーさん、俺の方が良い店知ってますよ?俺と行きましょうよー」
「テメェ!横取りすんじゃねーよ!」
「ハァ!?横取りも何もまだテメェと行くとか言ってねーじゃん!ね!おねーさん、どうします?」
「俺でしょ!」
「いや、俺だよね!?」
、、、、、
「っつーか、無視!!?」
沙織はただ一心にコースの先を見つめ続けた。
それでも、私は応援せずにはいられないんだ。