第4章 インターハイ
「ちょっと香田ー。これ邪魔だから片付けてよ」
治療中も部活には顔を出した。マネージャーとして。
「ホントアイツ使えないよねー。全国も結局出られなかったし」
「ホントそれ!期待させといて怪我するとか無いわー。それに比べて由紀は今調子いいよね!次の地区大会狙えるんじゃない?」
「当たり前でしょ!体調整えるのも練習のうちなんだから。怪我でレース棄権とか論外!」
体調を整える?
テメェはそーやってプールサイドでくっちゃべってただけだろが。
家に帰っても敵だらけだった。
「あなたが全国大会に出るってご近所に言っちゃったのに出られないなんて、どういうこと?」
「水泳で身体を壊すなんて何考えてるの?体育ができないなんて内申に響くんじゃないの?」
「やっぱりあなたは何をさせてもダメね」
「水泳なんてさせるんじゃなかった」
ふざけるな。
私は後悔なんてしていない。
必死で練習したんだ。
何をしてでも強くなりたかっただけなんだよ。
治療が終わったら、きっと、、、。中学では無理だったけれど、高校に入ったらきっと、、、。
そうしたら、お母さん、次は私を見てくれるよね?
そう思っていた。
けれど、治療後もタイムが戻ることはなかった。
唯一の味方だった水さえも私を責めるように身体に重くのしかかった。
その時、怪我をしてから初めて涙が出た。
後悔なんてしていないはずだった。
次があるって前を向いていたはずだった。
なのに、、、
どうして私は競泳コースに行けなかったんだろう。
どうして私なんだろう。あんなに頑張ってたのに。
どうして、あの時すぐに病院に行かなかったんだろう。
あの時、あんなに泳がなければ。
全国ってそんなにも大切なものだったの?
どうしてそんなものに行きたかったんだろう?
「ただのバカじゃん、、、」
そうして気づいたら動けなくなっていた。