第4章 インターハイ
中学に入ると速攻で水泳部に入った。
授業が終わると毎日、毎日泳いだ。部活の後は水泳教室で泳いだ。
それは、何よりも自由な時間。
「香田さん、私達帰るけど、まだ泳ぐの?」
「はい!もう一本いってから帰ります!」
「頑張るねぇ。香田さんってさぁ、どこ目指してんの?」
先輩は笑いながら聞いた。
「全国っす」
迷いなく答えた。
「え、、、あはっ!マジで?冗談だよね!?」
「は?」
「だってウチみたいなフツーの公立で行けるわけないじゃん!良くて地区大会だよ」
「そーなんですか。けど、私は行きますよ。それじゃ、お疲れした」
何がおかしい?
笑うなら笑え。
ただひたすらに泳いで泳ぎまくった。
そして中1の夏レギュラーに入った。
けれど、地区大会止まりだった。
「ほら、言った通りでしょ?全国は甘くないんだって」
「そーだよ!香田さん、すごく頑張ってたよ」
「うちでこんだけ行けただけでもスゴイよ!ねぇ!?」
「そうそう!快挙!笑」
この人達がなぜ笑っているのか分からなかった。
なぜ頑張ったなんて言えるのか分からなかった。
悔しくて悔しくて、もっともっと練習した。
中2の夏、あと一歩のところで全国を逃した。
まだまだいける。
もう少しなんだ。もう少しで何か、、、。
「香田さん!俺、君の泳いでる姿が好きで、、、良かったら、俺と付き合ってください!」
初めて告白をされたのはこの頃だった。相手は人気のある男の子だったと思う。その子のことはカッコイイと思ったし、嫌いではなかった。でも
「私、そういうの興味ないから」
水泳のことしか考えられなかった。
「沙織ってさ、最近調子乗ってない?」
「高田くんのことも振ったらしいよ」
「えぇ!何様!?ってか高田くん、あーゆーのが好きなんだ」
「水着だし?何かしたんじゃね?」
「あはは!でもアイツだったらあり得るー!」
水泳の記録が伸びるにつれて、煩い声も増えたけれど、そんなのに耳を傾ける時間さえも惜しかった。