第4章 インターハイ
それからしばらくした時
「競泳コースに行かないか?」
と先生に言われた。
すごく嬉しくて家に帰るとすぐに母親にそのことを話した。でも、、、
「そんなコースに行ってどうするの?水泳選手にでもなるつもり?もっと現実を見て、兄さんみたいにちゃんと勉強しなさい」
また、、、兄さんか。
「先生、水泳で認められるにはどうしたらいい?」
ある日、水泳教室でそんなことを聞いてみた。
「んーそうだなぁ。小学校では水泳の大会は無いからなぁ。まずは中学で全国取ることかな!沙織ももちろん中学に入ったら水泳部に入るんだろ?頑張れよー」
全国、、、。
そうか、そこで勝てばいいのか。
年齢が上がるにつれて、だんだんと塾の時間は増やされたが、それでも泳ぎ続けた。
競泳コースの選手達を見る度、競うように必死で泳いだ。
歳は変わらないはずなのに全然追いつかなかった。
それでも少しずつだが確実に近付いている。
そんな確信があった。
「こんな、、!まさか!」
兄が通う名門中学の入試結果を見て、両親は驚いた。
結果は不合格だった。
「模試の結果はいつも良かったのに、、、!」
「ごめんなさい。緊張しちゃって、できなかった」
私は精一杯悲しそうな表情をした。
「沙織に医学部は無理かもな、、、」
その言葉を待っていた。
心の中でガッツポーズをした。
水泳部の無い中学になんか誰が行くか。
私は水泳部に入るんだ。
そして、全国を取る。
そう決めていた。
「水泳なんかしてるから落ちたんだよ」
機嫌よく部屋に戻ると、兄はそう言って責めたが、
気にもとめなかった。
黙ってろよ。
私は自分で選んで落ちたんだよ。
見せてやるよ。全国に行って。
後悔なんて全くなかった。