第4章 インターハイ
沙織は俯いて真っ黒なスマホの画面を見つめた。
咄嗟にバカな嘘なんか付いた自分の口を戒めるように頬をつねる。
まぁ、どーせ行かなかったじゃん。
そうだよ、私なんか行かなくても結果は変わらない。
アイツが走るか走らないか、それだけだ。
私はただ見てることしかできないんだから。
結果を待っていればいい。
コンコン。
ふと更衣室のドアをノックする音が聞こえた。
「沙織?今、入っても大丈夫?」
巧だ。
「う、うん。大丈夫」
慌ててつねった頬の化粧を馴染ませて、スマホをポケットに入れた。
「今日もお疲れ。よく頑張ってたね」
ドアを開けて巧が優しく沙織を労う。
「明日、僕も休みなんだけど、ドライブデートでもしない?」
「う、うん!行こう行こう!」
断る理由なんてなかった。
だって明日は何の予定も無いんだから。
むしろ夏休みに入って巧は毎日仕事をしてたから、久しぶりのデートだ。
そう、これは喜ぶべき事。
沙織は笑顔で応えた。