第4章 インターハイ
「あー!疲れた!」
バイト終わり、沙織はいつものようにゴミ出しを終え更衣室で着替えて、ロッカーからスマホを取り出した。
画面を付けると、佳奈から大量にメッセージが来ていた。
「盛り上がってんなぁー」
興奮する佳奈の様子を思い浮かべて、思わず苦笑する。
長文を読むのが面倒だったので、すぐに佳奈に電話をかけた。
「もしもし!沙織ちゃん?」
1コールで出た佳奈。
返事、待ってたのかな?
また沙織は苦笑した。
「もしもーし。今バイト終わって帰るとこ」
「そうなんだ!お疲れ様!あのね、今日ものっすごかったんたんだよ!!」
うん、そうだと思った。
「新開くんが!!!」
それもそうだと思った。
その後佳奈は、新開がスプリントで京都の1年に惜しくも負けたこと、その後箱学はバラバラになってしまったものの、最後は新開がエースを引いてギリギリの所で単独1位を取ったことをマシンガンのように話した。
「もう!めちゃくちゃ、、、カッコよかった!!!」
新開が、か?笑
新開、アンタの中では最速になれたのか?
アンタの言葉を鵜呑みにして、今頃そわそわしている女子もいるんじゃないの?
、、、とにかく、良かった。
沙織は思わず突き出しそうになった右手を押さえた。
「、、、あの、アレ、荒北は頑張ってたんかな」
「荒北くん?えーと、うん!頑張ってた!」
いや、それ絶対見てなかっただろ!!!
どーせ、新開ばっか見てたんだろうなー。笑
沙織は呆れ笑いをした。
でも、きっとアイツは、、、。
キラキラした青い自転車に乗る荒北の姿が頭に浮かんだ。
「あ!沙織ちゃん、明日は見に来る?」
「いや、うーん、行かない、、、」
「えぇ!最終日だよ!バイトもないんでしょ?」
「いや、急にバイト入っちゃって」
初めて佳奈に嘘をついた。
「そうなんだー、、、それじゃあ、仕方ないよね」
残念そうな佳奈の声に心が痛んだ。
「うん、佳奈、私の分も応援してきて」
たくさん、たくさん応援して、、、。
「また結果出たら教えてよ」
楽しみに待ってるから。
「わかった!それじゃあバイト頑張ってね!」
「うん、頑張るわ」
そう電話を切って、溜息が出た。