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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第3章 夏は夜


4年前の夏、新開は水泳部にいる友人のインターハイ予選の応援に来ていた。
観客席には各校の旗がかかり、広いプールの上にはカラフルなフラッグがかけられ、独特の緊張感が漂っていた。そこに広がるプール独特の匂いが新開の鼻をつついた。
「まだ行かなくていいのか?」
新開はパワーバーをかじりながら隣で観客席にいる友人に声をかける。
「あぁ、午前中は女子の部で、俺たちは午後からなんだよ」
「女子の応援は?」
「俺はここでいいや。どうせ女子は勝てないだろうし」
諦めたように話す友人を見て、新開はムッとした。嫌味の1つでも言おうとした次の瞬間、歓声が沸き起こった。
「なんだ?」
新開はプールを見渡した。
「あれだよ。あのデカイ奴」
友人は舌打ちをして、指を差した。
プールサイドには女子自由形の選手が並んでいた。その中に、たしかに1人だけ背の高い選手がいた。水着から覗く手足は白く細くそれだけで一際目を引く。
「五中の香田沙織。アイツのせいで、うちの女子の全国行きは絶望的だ」
友人が舌打ちとともに背もたれに寄りかかった。見るのも嫌だといった様子である。
「今年に入ってやたら調子良くてさ、全戦全勝。しかも毎回二位との差は圧倒的。勝てるわけねーべ、怪物だよ」
彼女は人気のある選手らしく、よく見ると彼女の名前の書いたのぼりがそこら中にあった。しかし彼女は観客に手を振るどころか、観客席を見もしない。レースにしか興味がないといった様子だった。
「ふーん、、、怪物ね」
新開は怪物と呼ばれたその選手に興味を持った。
「ピッ!」
スタートの笛が鳴った。
一斉にスタートする。
香田というその選手が飛び込んだ瞬間、新開は持っていたパワーバーを落とした。
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