第3章 夏は夜
「もうすぐインターハイなんだって」
ふと佳奈が話し出した。
「あー、らしいね」
沙織は気の無い返事をして歩き出した。
「クラスのね、東堂くんって子も出るみたいなんだけど、皆に応援に来てねって言ってたの」
「ふーん」
そういえば、新開もそんなことを言ってたっけ、、、社交辞令だろうけど。
佳奈はさっきからモジモジしている。
「それでね、私も応援に行きたいんだけど、沙織ちゃんもどうかなって」
やっぱりそうくるよね、、、。
インターハイか。
佳奈は新開を見たいのかな。
佳奈の為だったら付いて行ってあげたいんだけどな。
荒北を応援する奴はいるのかな。
いや、アイツのことだから、きっと応援なんていらないって言うんだろうな。
アイツは素直じゃないからな。
沙織は佳奈にバレないように小さく溜め息をつき、天井を見上げた。
この3年間、考えないようにしていた言葉。
インターハイ。
その言葉は沙織の記憶の小さなトゲに引っかかって、ズルズルと苦い記憶を蘇らせた。