第3章 夏は夜
その顔を見て荒北は頭を抱えた。
「あーもう!クッソ!最後の楽しみで取ってたのによー!、、、やっぱりテメェとは今後一切関わらねぇ!もう二度と俺に近づくなよ!」
「残念。席が隣なので近づきたくなくても、近づかないといけないんですぅ。それに、今日、物理の本忘れたんだよね。後で見せろよな!」
「ハァ!?ヤダし!ぜってー見せねーっ!」
「いいじゃん!ケチ!」
「誰がケチだァ!テメェ、ちょっとコッチ来いや」
「アァ!?私とやるってぇ?こーなったら腕相撲で勝負だ!!」
「よっしゃ!やってやんヨ!!覚悟しろ」
「よしっ!じゃ、私が勝ったら大人しく教科書を見せること」
「いいぜェ、いくらでも見せてやんヨ!そン代わりィ、俺が勝ったらベプシ奢れヨ!!」
、、、、、、
5時限目、物理。
荒北は大人しく沙織に教科書を見せていた。
彼が俯き、抜け殻のようになっていたことを誰も知らない。
そして彼は少しでも沙織のことを可愛いと思ってしまった自分を、この後しばらく呪うのだった。