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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第3章 夏は夜


「ハッ!バッカじゃねーの?」
荒北は焼きそばパンを飲み込むと袋をグシャっと握り潰した。
「テメェ、アイツが本当は他に友達欲しいのに、気ィ遣って自分といるとか思ってンのか?
俺ァ、アイツがそんなに器用な奴だなんて思わねぇ。とろくて、不器用で、アホで、、、そんな奴がそんなバカみたいな気を遣えるかよ!ただアイツはテメェと一緒にいたいから一緒にいンだよ!だからアイツはテメェの後をヒヨコみたいにトコトコ付いてきて、アホみたいに楽しそうにしてンだろーが」

そうだ、アイツはきっと誰かさんと一緒で不器用でまっすぐで、、、俺は、アイツのそういう所に。
って、これ以上は蛇足だナ。

「アホ、、、ヒヨコ、、、」

「つまり、テメェもアイツと一緒にいたけりゃ、そうすりゃいいだけだろーが、バァーカ!、、、真っ直ぐ自分の本当に欲しいものを追いかけんのに、周りの目なんか関係ねェだろーがよ」

「ぷっ!アハハハ!」
ボヤくように最後の言葉を呟いた荒北に沙織は、とうとう我慢ができず吹き出した。
「っ!何だよ、テメェ!人がテメェなんぞに気ィ遣って励ましてやってンのに。」
荒北は立ち上がって、沙織に詰め寄った。
「あー、ごめんごめん。いや、だってアンタの口からヒヨコって!似合わなくて、、、あははは!あー苦しい!」
沙織は涙を流しながら笑っていた。
「ハッ!何だ、元気じゃねぇかよ。あーあ、励ましたりすンじゃなかったぜ」
荒北は呆れたように、またドカッと腰を下ろして、パンを食べ始めた。
沙織はその横顔をチラっと見た。

やっぱ、コイツって悪い奴じゃないかも。

「荒北」
「アァ?何だヨ、もうテメェの話は聞かねーからな」
「うん、もう大丈夫。ありがとう」
荒北はそう言ってニコッと笑った沙織を見て固まった。

あれ、何だこれ。コイツ、こんな顔だったっけ?

「あーあ、なんか気が抜けてお腹減ったわ。それ、1つちょーだい!」
荒北がボーっとしている間に沙織は買い物袋を漁り、メロンパンを取り出した。
「あーっ!!テメェ!それは俺ンだよ!勝手に取んな!」
荒北はすぐに我に返り、沙織の手からメロンパンを取り返そうとした。しかし沙織は素早く袋を開け、メロンパンを頬張った。
「んーうまいっ!」
沙織は幸せそうに頬を膨らませた。
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