第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない
「おい、、、マジでやんのかヨ?」
あの後、何日経ったのかはわかんねぇが
所変わって俺の部屋。
「いまさら何?ビビってんの?」
不満そうに膨れるピンク色の頬。
「俺がビビってるワケねェだろ!バァーカ!!むしろこういうの初めてだし、シチュエーション的にはすっげ楽しみにしてたヨ!」
「だったらいいじゃん。靖友は待ってるだけでいいんだから」
もうすっかり俺の名前を呼ぶのにも、何の躊躇いも無いこの女の余裕っぷり。
未だ俺の耳はこんなにもくすぐったいのが何か悔しい。
一体あの騒動は何だったんだ?
今思うとちょっと照れながら呼ばれていた頃が懐かしい。
だけど当たり前のように俺の名を呼ぶコイツの声が嬉しくもあり、、、
ってどっちだチクショー!
「ね、靖友?」
「う、、、なンだよ」
悪戯っぽくその綺麗な顔に笑みたたえたアイツの指先に胸を突かれて思わず唾を飲む。
まぁ、こういうのも悪くねェかも、、、?
ってェ!いやバカか俺!!
トチ狂ってンじゃねェ!変態か!?コラ!
正気になりやがれ!
「ッ!!こういうのはナァ!順番が大事だと思うんだヨ、俺は!!」
「何アンタ、そんな顔して真面目ちゃん?」
俺は必死にかぶりを振って叫んだ。
首をぐりん!と回して目の前の顔は見ないようにした。
そうだ、見るからダメなんだ。
見るから止められなくなる。
そうだ。この女のエプロン姿なんかに俺は負けねェ!!
「順番なんか混ぜるんだから一緒でしょ?」
「ちげーよっ!!肉と根菜は最初!葉物は最後!料理の基本だろーが!!」
そうだ。ちょっと可愛いからって、ちょっとエプロン付けてるからって、コイツはこういう女だ。
「そんな文句言うなら靖友がやってよ」
「そうじゃねェーー!!俺は、その、そうじゃなくて、、、」
ってまた名前で呼びやがる。
「そうじゃなくて??」
心底不思議そうに首を傾げやがるんじゃねェ!
何でだヨ。
分かれヨ。俺はテメェの手料理が食べたいんだヨ。
何でそんなこともわかんねェの??
「?」
「ッ!」
上目遣いで見てくる沙織。
「可愛いな、オイ、、、って、ハッ!!この、バカッ!」
恐る恐る目をやると、
ニヤリ。
悪魔のような顔でヤツが笑っている。