第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない
「ふー、、、」
金城サンを見送って息を吐いた。
さて。
何から話すべきか、、、。
「あらき、、、」
緊張で震える口を開いて振り返ろうとしたとき、
フワッ
背中に感じる温かい温度と久しぶりに感じる匂い。
「、、、何?」
あぁ、また。
今突然動き出したかのような鼓動を誤魔化そうとして、思わずぶっきらぼうになって胸が痛んだ。
それなのに。
「、、、俺と話すっつったクセに、アイツとばっか話して。どんだけ待たせンだ」
耳元で囁かれる拗ねた様子の憎まれ口。
「ふふ」
「あ?なーに笑ってんだヨ」
話そうと思っていたこと。
謝ろうと思っていたこと。
怒ろうと思っていたこと。
その全部がその瞬間、胸の中で爆発して
私は振り返ってその平たい胸に顔を埋めた。
「バカ、、、ッ!バカ!アホ!!!」
今なら分かる。
「、、、待ってたのはこっちだよ!」
どうしてもっと早くこうしていなかったんだろう。
私はずっとこの腕に抱きしめてほしかっただけなのに。
恥ずかしいとか、バカみたいだとか。
私らしくないとか。
そんなこと考えている暇があったなら、
「ごめん」
「ッ、、、」
「、、、相変わらず、イイ匂いだナ」
「私の言ったこと聞いてた?マジで、バカなんじゃない?」
「、、、イイだろ?たまにはバカになったって」
「いつもバカバカ人の事、貶すくせに」
「そうだったけど、、、こういうのもたまには悪かねェナ」
ただこの胸に飛び込めば良かったのに。
それだけで、不安なんか、
悩んでた時間なんか、こんな風に。
バカみたいに一瞬で無くなってしまうのに。
「靖友、、、」
くすぐったくて、まだその顔をちゃんと見ることはできないけれど。
「好き」
私の言葉に細い目を大きく開いて驚き固まるその顔がただ、今は。
「、、、、、あは。全く私がこんなに言ってやってるのに返事くらいしたら?」
「、、、ッ」
我に返って悔しそうに顔をしかめながら、それでも、もう一度強く。
強く痛いくらいに抱きしめてくれたその腕が。
「クソが、、、煽ってんじゃねェ。襲うぞ」
「あはは」
今はこんなにも愛しい。
「やってみろ、ばーか」