第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない
思わず口を押さえるも時すでに遅し、、、。
「このエプロン、意外と似合ってんでしょ!」
ニヤリと笑った悪魔が、今は天使みたいに笑ってやがる。
「、、、」
あー、顔が熱い。
何で俺はコイツに弱いんだ。
「似合ってるヨ、、、悔しいくらい」
もう、何もかもどうでもいいカモ?
俺は満面の笑みを讃えるヤツの肩に顔を埋めた。
あー、良い匂いだ。
「ま、そんなの着てなくても可愛いと思ってるケド」
「は!?何それ、もしかしてエロい意味で言ってる?」
「ッ!!んなわけあるかバーカ!!」
「、、、うーん?」
「何、顔しかめてんだ、コラ!!」
ダメだ、せっかくちょっと素直になれそうだったのに。
コイツの前だといつもこうだ。
「ぷっ!ま、そーだよね、アンタは意外とそういうんじゃないもんね」
「ウッセ!!そういうんでも、そういうんじゃないでも、どっちにしろ悪口だろ、それ!ナメてんなよ、チクショウ」
「よしよし」
「、、、料理中に人の頭とか撫でてんじゃねェよ」
「あはは、気持ちいい?」
「気持ちいいわけあるか!ベタベタするっての!」
それでも俺がその手を払い除けずにいるのは。
「、、、」
「ん?」
「、、、」
そのままサラサラの髪がかかる頸に手を添えて、
その薄い唇に自分の唇を重ねてしまうのは。
「、、、好きだ」
「うん、、、私も」
全部
この苦しいくらい甘ったりぃこの一言のせいで。
「、、、ね、一緒に作ろ?」
「、、、仕方ねェなぁ、、、」
そんな理由で今日も俺はコイツを甘やかしている。
「サンキュ!正直さ、自分で作るのより靖友が作った料理の方が美味しいんだよねー!」
「そんなんでおだてられると思うなよ!」
「言いつつ、包丁を握る荒北靖友であった、、、」
「バカ!変な解説入れてる暇あったら手を動かせっつーの!」
「はいはーい」
まったく俺は、誰よりもサボってるのが性に合うってのに。