第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない
「そうか、、、」
金城サンの口元が緩む。
そして
「そうだろうと思った」
ニコリと言うには不器用に、だけど目尻に皺を寄せるように大きな瞳を細めてククッと口元に手を添えながら可笑しそうに。
彼は笑う。
「、、、ありがとう」
そんな金城サンにつられて自然と笑顔になる。
そして次の瞬間にはもういつも通りのポーカーフェイス。
けれど今ではそれももう気まずいものではなくて。
それどころか、その微動だにしないように見えるその表情の奥に微笑みが見えるような気がする。
そんな気がするなんて、、、私はとんだ勘違い野郎かもしれない。
「ふふ、、、っ」
そんな自分が可笑しくて思わず小さく吹き出す。
「、、、」
見上げると金城サンは優しい目で私を見ていた。
だけど、どうしてだろう。
何も言わずに微笑むその瞳は陽炎のように揺れて。
「、、、?」
それはどこか寂しげで。
まるで泣き出しそうな人のもののようで。
「、、、それじゃあまた」
そう静かに切り出されて急に不安になった。
どうしてだろう?
彼はこんなに優しく笑っているのに。
どうして、、、?
また、、、。
金城サンはそう言ってくれているのに。
もう彼には会えないような気がした。
踵を返す瞬間に見せた笑顔に、その背中に。
私は声をかけずにはいられなかった。
「あの、、、っ」
私はこの人のことを何も知らない。
これから先も知らないままであることは変わらない。
だけど
「今日は、、、本当にありがとう、、、っ」
それでも見守っているから。
あなたがそうしてくれたように。
そう伝えたくて。
あなたが辛い時には手を差し出せるくらいには。
あなたが嬉しい時にはこっそりと、それを一緒に祝えるくらいには。
「お互い頑張ろう!私も頑張るから!!」
繋がっていてもいいですか?
「また、、、明日!!」
私の言葉に一瞬驚いたように目を見開いてこちらを振り返る金城サン。
そして彼は
「ああ、、、また明日」
そう言って目を細めて微笑むと、再び背を向けて歩き出した。