第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない
「そうだ。俺の為だ。逃げるな。好きなら諦めるな。カッコ悪くても情けなくても。レースではどんな形でも最後までしがみついた者が勝つ。お前なら分かっているだろう?それができない奴を俺はレースでは使わない」
そんな俺に説教臭い正論をクソ真面目な顔で不遜に言い放った金城は、そのまま立ち去ろうと踵を返す。
オイオイ、なんだよ。
あー、クッソ!ムカつく。
そういう一部の隙もねェところが大嫌いなんだ。
「ハーッ!!ったく、、、どこまで自転車バカなんだ?人のプライベートのことまで口出ししやがって、、、」
リセットをかけるように俺は頭をガシガシと力任せに掻いて、わざとらしく大きな溜息を吐いた。
それでも振り向きもしねぇ。
何て愛想のねェやつだ。
礼も文句も受け付けねェって?
返したければレースで返せってことか?
こういうの前にもあったな。
誰かサンとおんなじだ。
「ハッ!!」
俺はもう色々諦めることにした。
そして新しい空気を大きく吸い込んで、去っていく背中を睨みつけた。
ムカつく。
福チャンのように素直に言うことを聞く気にはやっぱりなれねぇ。
ケド、、、
「見せてやんよ!!俺の本気の走り見て、ビビんじゃねェぞ、金城!!」
なぜだかそう言い放った時にはもう、さんざん胸の中でつっかえていた何かはすっかり無くなっていた。
振り返ろうともしないその背中が、ほんの微かに揺れたような気がした。