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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない


「君は、、、辛かったら苦しかったら、諦める人間なのか?荒北は君にとってそんなことで諦められるような人間なのか?」


大きな、意志の強い瞳で金城サンは私を捉えたまま微動だにしない。
私の身体もまるで蛇に睨まれた蛙みたいに動かなかった。


逃げられない。
その名前を聞くだけで胸が痛くて、ここから逃げ出したくなるのに。


「、、、荒北」


その名前に息が詰まりそうになるこの胸が叫んでる。


離れたくない。と。
諦められるわけない。と。


アイツが他の誰かと一緒になるなんて、そんなこと考えるだけで泣きそうになるのに。
そんなこと初めから分かっていたのに、楽な方に逃げようとしていた。


「金城サン。私、間違ってた」



巧は優しかった。
何でも私に合わせてくれて、いつだって私を引っ張ってくれた。
私はずっとそれに甘えて、それが当たり前になっていた。
それが私の自然体?私はあの時の方が素直だった?
そうじゃない。

ごめんね。
言いたいことを言えてるようで、私は何も言えてなかった。
きっと彼は聞いてくれたのに。
頑張っているつもりで何も頑張ってなかった。
今思うとあの人の気持ちをちゃんと聞いたこともなかった。


そして今も私は同じことを繰り返そうとしてた。


ボヤける視界に金城サンの無表情が映る。


「私、荒北といたい。諦めたくなんてない。だからちゃんと自分のこと言うし、アイツのことちゃんと聞かなきゃいけない、、、」


たぶんきっと、それがアイツと一緒に居続けるために私が頑張らなきゃいけないこと。


「私、アイツに一歩でも近付きたいから」


金城サンの瞳が一瞬パッと開く。そして無表情がほんの少し緩んだかと思うと、微動だにしなかったその口が動いた。



「、、、聞いただろ?彼女は覚悟を決めた。お前はどうなんだ、荒北」


「え、、、!?」


その言葉に心臓が跳ね上がる。
金城サンの視線を追って、後ろを振り返るとそこには、汗だくで肩で息をしている荒北が立っていた。
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