第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない
「それってさぁ、付き合ってるって言えんの?」
最初はただのどーでもいい世間話だった。
このセリフを吐いたバカにも何の悪気もねェ。
そんなことは分かってんだ。
「ねぇ、靖友ってさ、何で名前で呼ばれるの嫌がんの?」
大学に入って何となく居心地のイイ同じ学部の奴らとメシ食ってる時に誰かが言った。
「ア?そんなんどーだってイイだろ。っつか、嫌がってんの分かってンのに呼ぶな、バァカ」
「どーだって良くねェよ。篠崎さんがせっかく靖友ちゃんなんつって呼んでくれてんのにもイライラしてよ」
「えぇ!何それ、勿体無ぇ!!」
「篠崎?ア?誰だソレ」
「ったくコレだよ!この自転車オタクは、、、」
「オタクって何だァ!オタクってェ!」
「そこじゃねェんだよ。篠崎さんの話!ホラ!あの朝も講義の時もよくお前に話しかけてくる、小柄で色白で髪がフワフワ〜っとしてて、目なんかクリっとうるうるしてる、、、」
何だコイツ。うっとりとした顔しやがって気持ち悪ィ。
「、、、あー、チワワ女ね」
俺は連れのそんな顔を見るのに嫌気が差してさっさと答えた。
「そうそう!チワワみたいに可愛い!!」
「ア?ちげーヨ!あの目、デカすぎて飛び出しそうな感じがチワワみてぇだし、なんか小さすぎて踏んづけちまいそうな感じだヨ。あとあの私可愛いでしょっつー感じもイライラすんだろーが」
「いや、しねぇし!」
「っつかあの可愛いさをそこまで穿って見れるとか、、、え、なに?靖友ってサイコパス?目、おかしいんじゃね?」
「ハァ?可愛いだァ?アレのどこが?」
俺は篠崎という名前らしい毎朝やたらと会う女の顔を思い浮かべた。
、、、うん、やっぱアイツの方がイイ。