第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない
パタパタ。
「え?」
俯く俺の耳に足音、そして太く黒いハイヒールと細い足首に張り付くジーンズ。
「ほら、早く」
驚いた。
彼女が戻ってきた、水を持って。
「とりあえず水だけ飲んで早く財布探しにいこ」
そう言ってプラスチックのコップをグイッと傾けて、彼女はその水を一気に飲み干した。
「ぷはー、生き返るー!」
まるで酒でも飲んだみたいなセリフだ。
「ほら早く飲まないと、財布無くなるよ!」
「あ、あぁ」
ゴクリ。
彼女に促されてコップを傾ける。
「ふぅ、、、」
冷たい水が喉を通って胃に入っていったのが分かった。
「よし!行こう!!」
ガン!と乱暴にコップを返して、今度は彼女が俺の手を引いた。
その手には結露した滴が付いていて、ひんやりと心地良かった。