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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない


アイツが彼女を連れて部室にやって来たのは、同じ日の部活後だった。


「おっつー、金城」

「あぁ、荒北か。お疲れ。お前、さっき帰ったんじゃなかっ、、、!!」


初めて彼女と話せた。


ただそれだけのことで何だか落ち着かない身体を疲れさせようと、部活が終わった後、俺は1人トレーニングをしていた。
そんな俺の目に飛び込んできたのは、アイツの背後からこちらを覗く彼女だった。


「あ。」


思わず声が出た。


「あ。」


それは彼女も同じだったらしい。
こちらを指差して口を開けたまま固まっていた。


カラカラ、、、


俺の脚も自然と止まっていた。



「ア?何だ、オメェら知り合いかヨ?」


荒北は俺たちが同じ学部だということは知らなかったらしく、俺と彼女を交互に見ては怪訝そうな顔をした。



「いや、同じ学部だが、その名前は、、、えっと」

「えっと、、、名前何だっけ?」


俺は彼女の名前を知らなかった。
そんなことさえも知らなかった。

それは彼女も同じらしく、眉間にしわを寄せて考えていた。


「あぁ、何だ。おんなじ学部だったのかヨ。コイツは沙織。えっと、、、」

「コラ!何で苗字忘れてんだよ!バカ!」

「バカって何だ、バカってェ!」

「私、沙織。いつもコイツがお世話になってます」

「世話になんてなってねェっつの!」

「あぁ、こちらこそ」

2人のやり取りに圧倒されながら、俺は笑った。


こんな風に話すんだな。


「俺は金城。金城真護だ。その、、、」

「?」


今朝、ペンを拾ってもらった礼を言おうかどうか迷った俺を見て、香田さんは不思議そうに小首を傾げた。


やはり言わない方がいいな、と思った。


代わりに俺が言おうとした言葉を先読みしようとしたらしい荒北が口を開いた。



「あー、コイツはその一応、俺の彼女。1回部室を見たいっつーから連れてきただけ」

「一応って何だよ」


恐らく照れているのだろう。面倒くさそうに荒北が言う。
そんな荒北に香田さんがツッコむ。


「そうか。お前に似合わず綺麗な人だな」


入学式の時、誰かが言った言葉を借りてからかった。


「ンなッ!」

「ぶふっ!」


荒北が目を剥き、香田さんが笑う。



そんな2人の姿が微笑ましかった。

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