第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない
講義が始まってからも彼女のことをよく見かけた。
しかし話しかけたことはなかった。
そんな機会もなかったし、そんなつもりもなかった。
女子の少ない理学部では、女子はたいてい固まって行動をしていた。
そんななかで、彼女はいつも1人で居た。
綺麗な彼女は度々男子達から声を掛けられていたが、あからさまに嫌そうな顔をして跳ね除けているのを何度か見たことがある。
興味のない講義の時は1番後ろの方で寝、
興味のある講義を聴く時は1番前に座り、時には俺の隣で彼女はただ前だけを見ていた。
そして昼休みと放課後になるとどこかへ消える。
決して群れずに気まぐれで、
そんな彼女はまるで猫みたいだった。
そしてどこかアイツに似ていた。
今度、もしも彼女が隣に座ったら
話しかけてみようか、、、。
ふと、そんなことを思った。
しかしすぐに馬鹿みたいだと思って笑った。
そんなこと、俺らしくないな。
今思えば、真剣にただ前を見る彼女にどこか自分に近いものを感じたのだと思う。
それでただ一瞬、興味を引かれただけ。