第12章 AfterStory 隣の彼は返事をしない
「はぁ、、、」
小さく溜息をついて私は席に着いた。
大きな講義室の1番前。別に単位目当てで仕方なく取った共通科目に興味はなかったけれど、遅めに来た為この場所しか空いていなかったのだ。
「あははは、靖友ちゃん!ばっかじゃないの?」
「ウッセーな!放っとけ!」
後ろの方から聞きたくもない声が聞こえる。
「うーーー、、、」
私は耳を塞いで机に突っ伏した。
「私もあんなだったら違ったのかな、、、」
荒北と楽しげに話す女子。
可愛げがあって誰に対しても明るく愛想良くて。
荒北の名前も気軽に呼んで、何でも無い風にその肩に手を置く。
正直、私なんかよりも、あの子の方が彼女っぽい。
そして
、、、私といる時なんかよりもずっと荒北は楽しそうだ。
「隣、いいかな?」
「、、、えっ?」
胸に重い痛みが走りそうになったその時、低い声が耳に入った。
ハッとして顔を上げるとそこには真面目そうなメガネの男がいた。
「、、、あ、あは。なんだ、金城サンか」
「おはよう。隣、いいかな?他に空いてなくて」
「あ、う、うん!どうぞどうぞ!」
「ありがとう」
爽やかに微笑んで、そう笑顔で礼を言う彼から私は思わず目を逸らした。
多分、私は今、ヒドイ顔してる、、、。
朝からキラキラとしている金城サンに、暗いモヤモヤした感情を悟られないよう愛想笑いをしながら、前を向く。
大丈夫。うん、笑えてる。
金城サンは同じ学部の人で、それから荒北の部活仲間だ。
顔は見たことがあったけど、ちゃんと喋ったのは荒北の部活を見に行った時が初めてだった。
その時は確か挨拶程度だったと思う。
なぜならその時の荒北は金城サンに私を紹介することに何故か照れていて、私をすぐに帰したからだ。
顔を真っ赤にした荒北。
「、、、ふふ、あの時のは可愛かったなぁ」
「え?」
「えっ?」
荒北の照れた顔を思い出してつい言葉が出てしまっていたらしい。
金城さんが不思議そうにこちらを見ていた。
「ごめん!なんでもないっ、、、」
「そうか?」
キョトンと小首を傾げる金城サン。
しかし彼はすぐに前に向き直った。