第11章 春は あけぼの
それくらい激しくて、だけど優しい荒北のキス。
今あの唇と私、、、。
憎まれ口を叩くその口元に思わず目がいく。
瞬間、気恥ずかしさが頂点に達した。
「、、、ッ!うるさい!誰かさんがサルみたいにがっつくからッ」
「アァ!?誰がサルだ、コラ!!」
先程まで密着していた距離で食い気味に怒鳴り合って、改めて距離の近さに気がつく。
「ハァ、、、ハァ、、、」
「ハァ、、、くそが、、、」
お互い真っ赤になりながら負けじと睨み合った。
しかしすぐに諦めたように荒北は短く溜息を吐いて、後ろの木にもたれかかった。
「、、、ハァ、、、悪かったな、がっついてて」
「、、、?」
そして不貞腐れたように口を尖らせた。
「っつーか、仕方ねェだろ。、、、初めてなんだから、好きな奴ができたのも。そいつと、、、キスすんのも」
「、、、!」
言いつつ顔を逸らす荒北。
必死で隠そうとしていても、その顔は耳まで真っ赤だ。
その姿に沙織の顔まで熱くなった。
「、、、、全部テメェが悪ィ」
「、、、、」
「、、、アイツと違って慣れてねェんだヨ」
荒北は顔を背けたまま沙織を見ようとしない。
沙織の胸はキュンと痛んだ。
「仕方ねェだろ。ずっと、好きだったんだ」
ズルイ。こんなの。
沙織はその頬に思わず手を伸ばした。
そんな顔して、、、悪いのはアンタの方だ。
そしてその俯く頭をギュッと抱き寄せた。
「、、、ごめん、言い過ぎた」
柔らかな黒髪が頬を掠める。
荒北は大人しく従った。
「、、、私も好きだ」
ふんわりと荒北の匂いがした。
「今はアンタのことしか考えられない」