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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第11章 春は あけぼの


「ん、、、む」


息が苦しい。


「ハ、、、ッ」


荒北の息も上がっている。


熱い。
涙なのか汗なのか、もう何かも分からない水気は、荒北の優しい手に撫で取られた。




今、私、荒北とキスしてる。


こんな、木の陰で。
誰が来るかも分からないのに。




乱暴なのに優しく触れる、巧と違って薄い荒北の唇。
その唇は細かく沙織の唇の上を、まるでガラス細工でも扱うかのように丁寧に動いた。



私、、、こんなに大事に思われてたんだ。



そう荒北の気持ちを感じる度に、沙織の胸にほろ苦い痛みが走った。



何、、、コレ?



ドキドキと高鳴る胸は苦しいのに、荒北の匂いがする度に胸のつかえが取れるかのように落ち着く。



「、、、ッ」



ずっとこうしていたい。



堪え切れずその頭に回すと、その手に柔らかな黒髪が触れた。
沙織は何度もその髪を撫でた。




ダメ、、、好き。
この細い指も。薄い唇も。サラサラの猫っ毛も。全部。
抱き締めたくなる。



だけど、、、


「ぷ、、、はぁッ」



沙織は堪えきれなくなってその身体を引き離した。



「ハァ、、、もう、だめ、、、ッ!」

「ハァ、、、ッ、何だヨ、突然」

突然離された距離に荒北は不機嫌そうに顔をしかめた。


「息が、、、はぁ、、、もたないっ」


軽く過呼吸気味になりながら必死で声を振り絞った。


「何だ、それ。ハァ、、、ッ。鼻で息しろ、鼻で」


言いつつ荒北も肩で息をしながら、口元を拭っている。
きっとあのまま続けていたら、どちらかが酸欠になっていたことだろう。



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