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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第11章 春は あけぼの






「荒北、、、」




その姿を見た途端、思わず体が動いた。





すぐ目の前でそっとしゃがみ込んだが、荒北は気が付かないまま気持ち良さそうに寝息を立てている。

近づくと長いまつ毛の一本一本が見えて。

その寝顔は、いつか見た時と同じようで、
沙織は思わず微笑んだ。





「ったくキャラに合ってないんだよ、、、」





サラサラの黒髪が風に揺れる。




きっと荒北は受かったのだろう。
そんな顔をしている。


そしてここで、たぶん、





沙織のことを待っていた。





ずっと。





「、、、っ、、、、う、、、」






笑えるほど無防備な寝顔なのに、
胸の奥がぐちゃぐちゃになって。




ただ見ているだけで涙が溢れた。










沙織は荒北を起こしてしまわないようにと急いで顔を埋めた。
制服の袖が熱く濡れて、それが徐々に冷たくなっていくのが分かる。




「どうして、、、今さら」





分かってた。結果なんて、とうの昔に。




だから、後期試験の準備をすぐに始めた。
家に籠りきって、備えてきた。
その間、涙なんて出なかった。
そんな暇があったら、前を向けと、






コイツはきっとそう言うから。





「私、、、っ、、、ダメだった。ゴメン、、、。分かってんのに。何で、、、こんなっ、、、」




泣きたくなんてなかった。
特に荒北の前では絶対に泣いたりしないと決めていた。




「泣くなんて、、、っ、悔しい、、、自分のせいなのにっ」



そんな奴だと思われたくなかった。
荒北だけには。




負けたくなかった。




けれど、もう止めることはできなかった。




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